【対象年齢:2歳半〜】
とおい ところへ いきたいな
モーリス・センダック作
じんぐうてるお訳
冨山房 1978年
もうずいぶん古い本です。
私が子ども時分に好きで何度も何度も読んでいた本を母がとっておいてくれたので、
今こうして私の子どもに読んであげることができます。
初版は1978年ですが、現在でも増版に増版を重ねて書店で売っていますのでどうぞ安心してください。モーリス・センダックと言えば「かいじゅうたちのいるところ」が有名ですが(いずれこの本も紹介します)、実はそれよりももっと名作と呼べる本がいくつかあります。そして「とおい ところへ いきたいな」はそんな名作の一つと言えるでしょう。
マーチンは弟ができたことで、お母さんが赤ちゃんにかかりっきりになります。今まで独り占めしてきたものですから、自分の話を聞いてくれないお母さんに腹を立て、ついに「とおいところ」へ旅する決心をします。
そして旅先で馬とすずめと猫に出会い、揃って「とおいところ」へ出かけるのですが……。
「とおいところ」で馬やすずめや猫との微笑ましくも激しいやりとりはぜひ本を手にとって読んでみてください。私からはこの作品の素晴らしいところを一つだけご紹介したいと思います。本書はこの言葉で締めくくられます。
マーチンは、いちども とまらず はしって かえった。
この一文は実に少年らしい瑞々しさにあふれています。今のマーチンの気持ちをすっかり表してしまったと言っても過言ではないでしょう。そしてうちへついたあとのマーチンの様子までこちらに伝わってきそうです。絵のないところまで絵が浮かぶところが名作たる由縁ではないでしょうか。
主人公の少年は四五歳といったところです。だから対象年齢が二歳半というのは早すぎると思うかもしれませんが、物語をきちんと全部理解できなくても子どもはイラストとお話を自分で紡ぎ合わせて想像しますので、どうぞ早いうちから読んであげてください。