【対象年齢:小学校2年生〜】

ふしぎなかぎばあさん

手島悠介作

岡本颯子絵

岩崎書店 1976年


私が子供の頃に何度も何度も読んだ本であるが、現在でも手に入る名作である。

漢字にルビが振ってあるが、それでも主人公が小学3年生であることを考えるて対象年齢を小学2年生とした。もちろんそれよりも早く読んでも一向に構わない。

 

主人公の広一くんは鍵っ子である。その大切な鍵をうっかりどこかへ忘れてしまったことから物語は始まる。鍵をなくして困っている広一の前に現れたのは、おかしな格好をしたおばあさんだった。おばあさんは手提げから大量の鍵を取り出すとそのひとつで玄関ドアを開けてしまう。

怪しい人だと訝しむ広一をよそにおばあさんは勝手に台所にはいると料理を作ったり、お話を聞かせたりしているうちに広一はすっかりおばあさんを気に入ってしまう。。。。

 

今でこそ鍵っ子なんて珍しくもなんともないが、この本が出版された当時はまだまだ少数だったはずだ。そんなはたから見ればかわいそうな境遇の子どもを救う存在としてかぎばあさんは描かれたのではないだろうか。

 

どことなくメアリーポピンズを連想させるが、メアリーポピンズが母性と父性の両方を併せ持った存在であるのに対し、かぎばあさんは母性だけだ。しかしその母性は魔法の手提げと同じくらい広く深いもので広一をやさしく包み込む。またメアリーポピンズが若さと美しさを兼ね備えた完璧なナニーであるのに対し、こちらはその名の通りおばあさんであるから、こういっては何だが性別を超えたまるで大地のようなすべてを受け止める度量の深さを感じる。

 

おそらく、だれもがこんなおばあさんがいたらいいなあと思うような理想のおばあさん像がある。広一は大好きなポークソテーをたらふく食べてお腹いっぱいになる。私もこの本を読んでポークソテーが食べたくて仕方なくなったものである。それからお話を聞かせてもらってこれまでにないほど楽しいひとときを過ごす。そのあたりの詳しい内容は私があれこれとネタバレをするより本書を読んだほうがずっと楽しめるだろう。

 

そんな楽しい時間の一コマに「ジンジロゲの歌」がある。これ、楽譜付きで紹介されているほど本書では重要な位置をしめている。意味はまったくわからないがとにかく楽しい歌である。子供の頃この歌の響きがすきですっかり暗唱してしまった。そして今子どものためにその歌を歌ってやっているのである。歌ってやれば子どもはみな気に入ってしまうだろう。音符など読めなくたって構わないのである。適当に節を付けて自分流に歌えばいいのだ。子どもは真似をしてあっという間に自分のものにしてしまうものだ。大切なのは歌ってやることである。歌えないからといって飛ばしてしまっては絶対にいけない。この歌なくして「ふしぎなかぎばあさん」は成立しないといっても過言ではないからだ。

 

かぎばあさんは理想のおばあさんであるが故にずっといてくれることはない。どんなに名残惜しくても時間がくれば帰ってしまう。でも大丈夫。すぐにお母さんが帰ってきてくれるのだ。それが理想の母親でなくたって、やっぱり子どもはお母さんが一番なのだから。