【対象年齢:3歳〜】

まよなかのだいどころ

モーリス・センダック作

じんぐうてるお訳

冨山房 1982年(オリジナルは1970年)


言わずと知れたモーリス・センダックの名作です。我が家では私も妻もセンダックが好きなので、自然とセンダックの著作が増えてしまいます。

センダックは吹き出しをつけた絵本という分野の開拓に乗り出しましたが、マンガ文化のある日本ではそこに目新しさはなくただマンガっぽくみえるだけになってしまったのは少々残念ではあります。

 

しかし、センダックの一流のイラストはもちろん健在ですし、イラストレーターの描いた絵本は文字が少なくて読むのがたいへん楽なのはうれしいです。絵本には二種類あって、イラストレーター自身が絵も文も書く場合と、文章とイラストを分業する場合に別れます。センダックは数多くの分業絵本でその才能を発揮していますが、同時に全部自分で作っている絵本も少数ではありますがいくつかあります。そして「まよなかのだいどころ」はその一つなのです。

 

センダックは年を経るごとに線の太いイラストを好むようになります。本作やいずれ紹介する「かいじゅうたちのいるところ」は後年の線が太い時代の絵本です。どちらが好みかはそれぞれにお任せしますが、個人的には線が細い時代のイラストにより魅力を感じます。まあどちらも非常に高いレベルの話ではありますが。

 

本作の主人公の名前はミッキーといいます。これはディズニーのミッキーマウスに対するリスペクトの現れなのですが、同時にオリジナルのミッキーマウスが持っていたアニメーションにおける卓越したキャラクターが次第にどこでもいるようなものに変容していくことへの失望と、本当に良いものが失われていくことの危うさを警鐘するためという深淵なメッセージが込められています。

 

もっともこの絵本のどこを読んでもそんなことは一ミリたりとも出てきませんが、当時のセンダックがミッキーと名付けるにあたって、ミッキーマウスが単に好きだったからではないことは他の著作が明らかにしています。

 

そんな大人の事情は差し置いて、絵本に飛び込めばそこは夢溢れるたいへんロマンチックで楽しい世界が待っています。隙きのないイラストはどこを眺めても楽しいものです。イラストレーターの作った絵本らしく言葉のないページが見開きで子どもたちを出迎えます。子どもは絵のあちこちに描かれたイメージを「これはなに?」を繰り返して眺めます。物語は実に単純なものですが、子どもは何度も読みたがります。

 

それにしても毎朝ケーキを食べているんですから、そりゃあアメリカ人は太りますよね。