【対象年齢:3歳〜】

チムとゆうかんなせんちょうさん

エドワード・アーディゾーニ作

せたていじ訳

福音館書店 1963年(オリジナルは1936年)


やあ、ぼうず、こっちへこい。

なくんじゃない。いさましくしろよ。

わしたちは、うみのもくずときえるんじゃ。

なみだなんかはやくにたたんぞ。

 

 

「チムとゆうかんなせんちょうさん」のハイライトはなんと言ってもこのセリフで決まりです。難破した船で逃げ遅れたチムが船と運命を共にしようとしている船長に言われる言葉です。今どきこれほど硬派で男気にあふれた絵本がほかにあるでしょうか。表紙のイラストはまさにこの言葉が語られるシーンのものですから、絵本の作者や編集者たちもここ一番のセリフと感じたのは間違いありません。

 

チムはこの言葉を聞いて、もうビクビクするものかと決心します。それを聞いて本を読んであげている男の子たちも決心します。今どき親にだって言われることがなさそうな言葉です。こうした言葉やその精神性を教えてくれるのもまた絵本の素晴らしいところなのです。子どもはまさに絵本を読んで成長します。だから子どもの年齢よりもちょっぴり背伸びした絵本を与えてあげるのがいいといつも私は考えています。

 

ちなみに本書には、読んであげるなら5歳から、などと書いてありますがとんでもない話です。ぜひとも3歳くらいから読み聞かせ、チムおにいちゃんの勇ましい冒険を味あわせてあげましょう。チムはズボンのボタンの縫い付けまでできるよくできた少年です。書いてませんが年の頃は6,7歳といったところです。現代ならボタンの縫い付けができない大人だってたくさんいるというのにです。この絵本が描かれた1936年当時では子どもがそのくらいのことをするのは当たり前のことだったのでしょう。今よりもずっとみんなが大人な時代の話です。

 

作者のアーディゾーニはこのチムシリーズを生涯のライフワークとし、続編を何冊も出しますが、珠玉の作品といったらなんといってもこの第一話に尽きます。アーディゾーニのイラストが素晴らしいのはもちろんですが、物語の構成も一作目が抜きん出て輝いていると思います。

 

我が家では息子が泣くと、いさましくしろよ、なみだなんかはやくにたたんぞ、と言ってやります。その程度で泣き止むわけではありませんが、親の余裕を取り戻すいいきっかけにはなります。