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真夜中の映画館で学ぶ

くしくも橘さんとネタが被った。しかしあちらは子どものためのパパ行事であったのに対し、こちらは完全に大人の息抜きタイムとしての映画鑑賞である。

 

アイアン・スカイはなかなかの傑作だった。低予算のSF映画だったが、アイロニーがふんだんに利いていて予算不足を内容でカバーした映画だった。アイアン・スカイは単にバカバカしい映画ではなかった。風刺の利いた良作だった。そのアイアン・スカイが続編を作ったとなれば映画館に足を運ばないわけにはいかないだろう。

 

ところがどうだろう。クラウドファンディングで金を集め、ファンの想いを背負って制作された続編「アイアン・スカイ第三帝国の逆襲」に風刺は影も形も消えていた。ぴりりと辛かったアイロニーは一体どーこにー?

 

そうだ。アイアン・スカイ2は単なる低予算B級SF映画に成り下がっていた。それだけでない。随所にハリウッド映画への憧憬が感じられる気色悪い映画だった。一作目の人気を糧にメジャーデビューを目論んだ魂胆がスケスケに見えて見ているこちらが恥ずかしくなるほどだ。これはもうB級ではない。C級D級いや早急に記憶から消し去りたい映画だ。他の映画をみてお口直しをしなければならなくなった。

 

なるほどこれは失敗だった。しかしこれはある意味良質な失敗作と言えよう。輝かしい第一作と見るも無残な第二作の比較、考察が容易に可能である。アイアン・スカイはなぜ自らのブランディングに失敗したのか。おそらく、製作者は皮肉や風刺をこのほか利かせようとしてパート1を作ったわけではなかったのだろう。監督はただ面白おかしくしたいだけで散りばめたのが、結果的にスパイシーに仕上がったに過ぎなかった。言ってみれば一作目はまぐれ当たりだったのである。

 

制作陣は二作目を作るにあたって、一作目の成功要因をもう少し分析するべきだった。しかし分析をまったくしないまま一作目と同じノリで料理をした結果、スパイスをすっかり入れ忘れたのである。胡椒の一振りさえ忘れたのだ。

 

なるほどこの映画は上手く行った時ほどその要因を分析することの大切さを身をもって教えてくれた良作だったのである。そのための1,300円など安いものだ(と言い聞かせ)。