
まったくこんなクソ暑いなかなんだって外へ出ないといけないのだ。クーラーの効いた部屋で映画を観ていた時代を懐かしむも現実はカンカン照りの猿江公園に来ている。午前中はまだマシというマシの概念からして間違っている。35度をわずかに下回る気温のどこがマシというのか。それでも我が息子は汗だくになりながらも我が世の夏を謳歌している。
こちらは熱中症予防のラムネとスポーツドリンクを常時与えながら自分も摂りながらセミ取りに付き合う。付き合うと言っても捕るのはもっぱらぼくの役目であり、しかしセミの素手捕り名人とだれも言ってくれないから自分で言ってしまうが、手が届くところにセミを発見したら本能がすでに行動をおこしている。
そんな名人芸に触発されたのか息子も自分でセミが捕りたいと言い出した。息子の身長に届く場所にセミが止まっていることはまれであるが、よく探せばいないことはない。大抵の親はそこで虫取り網なんかを買ってやるのだろうが、うちはあくまでも素手捕りにこだわる。そしてついに高さ90センチほどの木の幹に止まるアブラゼミを発見した。息子は細心の注意を払ってセミに近づく。教えてないのに腕を蛇が鎌首を持ち上げるように曲げ、そして一瞬のスナップ!
パシッ!
見事息子は手中にアブラゼミを収めたのである!見事見事。ぼくの技を完璧に盗んだ息子の大勝利である!自力で捕獲したセミを眺めて息子は満足そうである。暑い日に繰り出してきた甲斐もあったというものだ。またひとつ、息子は成長の階段を登ったようである。そうやってキミは大きくなっていくのだなあ。
暑さは依然衰えるところを知らないが、セミ界は一つの山場を過ぎつつある。というのもアブラゼミの合唱の合間にツクツクボウシの声を聞くようになったからだ。そして探してみたらあったみつけたツクツクボウシの抜け殻である。
はやく涼しくならないかなあと思いながら、四歳の夏はもう巡って来ないのだなあと思った暑い日のこと。
