
最近アニキの成長が目覚ましい。あれほど忌み嫌っていた妹がかわいいと思える瞬間があるようなのだ。もちろんそれは瞬間なのであって多くの場合邪険に扱っているが、二十四時間邪険にしていた時代に比べると大いなる進歩と言わざるを得ない。
それに最近妹がかわいいというセリフをよく口にするようになった。妹のあどけないスマイルににいにいも思わず破顔して抱きしめずにはいられないようだ。ただしその抱きしめが強すぎて妹に嫌がられてしまうあたりに不慣れさを感じるが、彼の辞書にほどほどという言葉はない。
毎朝保育園に行くためにヘルメットと上着を着せてやるが、最近はアニキが妹に着せてやることがある。妹のほうも父親(ぼくね)に着せられるのは寝転がって嫌がるくせに、にいちゃんだと喜んで着せられている(ちぇ)。いつも邪険にされているのに妹もにいにいが大好きなのだ。
手持ち無沙汰になったぼくはカメラを構えて写真を撮る。いじらしい二人の姿を眺めながらなんだか感動して涙がでそうになっちゃった。にいにいこんなことができるようになったんだね。妹ちゃんもなんどもファスナーに挑戦する兄ちゃんの指先を真剣に見つめている。
ようやくファスナーが上がるとふたりとも実に満足そうだ。お兄ちゃんえらいねえ、妹ちゃんよかったねえ、ぼくはそう言ってふたりにちゅーちゅーしようとするがヘルメットが邪魔で顔にあたり、二人はぼくから逃れるようにして玄関へと向かったのであった。二人が仲良しの瞬間はお父さん不要らしい。