
「ぼくはもうかわいくないって言うんだね」
5歳の息子は以前から甘えん坊であるが、ここ最近より一層甘えん坊になったのは保育園が休園になってからという認識で間違いない。
ワンオペで歳の違う二人の子どもを見る場合、どうしても年下の妹を優先せざるを得ない。また、2歳の子の可愛さというのは格別のもので、娘に接する際どうしても声が一段階高くなってしまう。この2つが合わさって息子を耐え難い苦悩に陥れているようだ。
表現力豊かな兄は身をよじって叫び地団駄を踏みときには地面を転げ回ってその気持ちをぼくに伝えようとする。これに対する対応は一様ではない。それはそのときのぼくの心の余裕具合によって左右する。余裕があれば妹と同じように声を一段高くして「およよよ〜お兄ちゃんもはにゃにゃなのぉ?よちよちチュッチュッ」とかやってやるが、そうでない場合は「2歳と5歳は違うんだ!なんでもおんなじようにしてもらおうと思うな」と言ってしまう。
もしこれを見て「まーっこんな対応いけませんっ!」とかいう人がいたら言ってやる。
「おれだって人間だ!」
息子は基本的に全ての案件において妹以上を求めてくるため、残念ながら全部に応えてあげることができない。最近は妹のほうも言語によるコミュニケーション能力を急速に増強しつつあるため、「おにいちゃんばっかり!」の対応を許すはずがなくぐいぐい迫ってくる。妹はそこに「にちゃい」の強力な武器を出し惜しみなく投入してくるからぼくはアニキに我慢をさせてばかりだ。
そんなストレスを溜め込んでいる息子が今日言った。
「ぼくはもうかわいくないって言うんだね」
それはちょうどこのブログの写真を選んでいるときだった。
この写真は去年の6月1日に撮影したものだ。現在の息子に比べれば幼さが残りとても可愛らしい。去年は感じなかったが、1年経って息子の成長をこういう写真という形で見られるのはとても素晴らしいと思う。今しか残せないものを今ちゃんと残す大事さを改めて知った。私フォトグラファーでもありまして、あなたのお子さん出張撮影致します。宣伝。
それで、この写真を見たときに思わず
「かわいい〜!1年前だけどまだ幼い感じがあるね〜(はーと)」
と夫婦で言ったのである。それを聞いた息子の言葉が上記のそれだ。
息子は言ったあと口を歪めてむすんむすんと息を漏らしながら泣き始めた。
ぼくは持て余すほど大きく成長した彼を引き寄せて全身で抱えるようにして抱きしめた。
息子は体を縮こませて丸くなってぼくにしがみついてきた。
なんだ良い話じゃないか。ここで終われば。
そこへ妹がトコトコやってきてぼくらが座っていたソファにあったトミカに手を伸ばした瞬間、アニキは妹の袖を掴んでそれがすっかり脱げてしまうほど引っ張って妹を転ばせたのである。
「おにいちゃんやだーっ!おにいちゃんあっちいってーっ!」
最近言葉の階段を数段あがった妹ははっきりと滑舌よく叫んで泣いた。やれやれ。
ぼくは息子をどかして妹を抱きしめてやった。そしてそういう手の出し方は駄目だと言うしかなかった。
妹はわりとすぐにケロッとして妻と一緒に寝室に入っていった。ぼくは再びびすんぶすん泣いている男児を引き寄せてさっきよりも強く抱きしめた。こういうときはなにを言っても駄目なのだ。しばらく抱っこの状態で背中をさすり頭をなでてほっぺにちゅーをした。それから
「お父さんはキミが大好きだよ」
と言ってやった。そして彼はすんなりと寝室に行ってどうやら寝たようだ。
ぼくは息子をもっと甘えさせてやるべきなんだろうか。
ムズカシイ。