
「脱いで」
成長著しい2歳の娘は食事の時自分の椅子に座らない。
「だっこ」と言って短い両手を上げ背中を反らせている姿に抵抗できるはずもなくぼくは娘を膝の上に乗せる。12キロを超える荷重を足一本で受けているとじんわりその重みに押し付けられたお尻が痛む。妹ばっかりずるいと16キロのアニキが口を尖らす。
お昼をいつものように娘をだっこして食べていたとき、娘はおもむろに服を脱ぎたいと言い出した。え、今脱ぐのと何度も聞いたがどうしても今脱ぐといってきかないのでぼくは娘を膝の上で上半身ハダカにした。それじゃあ何着るのと聞くと、娘はぼくが今着ているシャツを指差してひとこと。
「脱いで」
…………。え、今なんとおっしゃいました?
「これ着るのぉ。ぬーいーで!」
お父さんの服着るの?
「ぬーいーで!」
娘はまったく容赦ない。あくまで脱げの一点張りだ。ははは。こんなことでいちいち脱ぐやつなんかぁいないよなあ。親ならバシッと。ははは。脱ぎました。
ぼくは食事中に屈辱なんだか悦びなんだかよくわからないままシャツを脱いで娘に着せた。
大きすぎるシャツに覆われて娘は満足したのかもういいと言ってタンスから新しい服を出すことを要求した。ぼくはいそいそとシャツを着てボタンをとめてから娘がこれという服を出してあげて着せたのである。イヤンこんなの初めて。