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The Golden Month : DAY 20

「独占欲の許容」

 

息子の独占欲が強い。

なんでも独り占めしないと気がすまない。それができないときは、泣きわめき地団駄を踏む。

そして大抵の場合、独り占めできないのでよく泣いている。

 

今朝もまた。

保育園休園中の日課として朝の天祖神社へのお参りへ行ったときのことである。

暑いので妻がカルピスウォーターを1本買った。みんなで飲もうと言った矢先に

「オレが最初ッ!」

が始まった。まあそれはいい。最初に飲ませること自体は問題ではない。ところが妹が横で飲みたい飲みたいと手を伸ばしているのに一向に離そうとしない。だから仕方なく親が介入することになる。

 

「もういいでしょ。妹にわたしてよ」

もうこの段階で激昂した息子は

「だってさあ!妹に渡したらなくなっちゃうよ。オレほんのちょっとしか飲んでないじゃん!」

もうすでに三分の一ほど飲んでいるくせに堂々と叫ぶ。それでも半ば取り上げるようにして娘に手渡した。娘は小さな両手で抱えて一生懸命飲みだした。だがそれはポーズばかりで実際はほとんど飲んでいない。まだゴクリゴクリと飲めないのだ。それなのにアニキときたら大声で叫ぶ。

「ほら!もうなくなっちゃうよッ」ダンダンダンッ!(地団駄踏む音)

「ほら!ずっと飲んでる。もうなくなっちゃう〜!うわーんあんあんあん!」

 

おいおい、全然減ってないから。それでも息子は妹からペットボトルを奪うと小走りに逃げて少し離れたところで飲みだした。獲物を奪ったケモノかお前は。

 

「もうオレ全部飲んじゃうからっ!」

彼は力強く宣言した。涙を流し声を荒げ肩を弾ませている。

 

何が彼をそこまで固執させるのか。分け合えば余るといくらいったところでそれは息子にとって親の無理解にしか映らないのか。

 

ぼくだけを見て!ぼくだけを愛して!ぼくだけに与えて!

 

ぼくと息子の二人だけの時間は当然100%息子に与えているが、妹がいるときも同様にしろという彼の要求を飲むことはできない。できないのだよ息子くん。

 

彼の心は栓の抜けた50メートルプールだ。愛情を注いでも注いでも決して満たされない。

育児の先人たちは「全てを与えよ」という。しかし妹の前でそれはできない。妹だってお兄ちゃんがもっているものは欲しいのだ。「あなたたちは息子ちゃんに厳しすぎるわよ」そんなことを言われたこともある。でもしかしだって底なし沼のような要求に応え続けていくことがどうしてもできないのは、まだ親として人間としての修行が足らないからだ。

 

育児は育自、とは子育て界隈では有名なセリフだ。そしてそれは真意をついている。

ただ力で押さえつけるのではない接し方を日々模索している。