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The Golden Month : DAY 21

「侮れない2歳児」

 

最近娘の成長が著しい。保育園に行っているほうが言葉が早いかと思ったが、休園してからのほうがよく喋るようになったように感じる。もっともおしゃべりの先生であるアニキが四六時中一緒にいるので言葉が上達するのも不思議ではない。なにしろおにいちゃんの言葉はすべて真似をする。なにかと足蹴にされるくせに妹はおにいちゃんが大好きだ。

 

夕ご飯のとき。

娘は取り分けた鶏肉を「これいらない」といって床に捨てた。ぼくはこれは看過できんと思って怖い顔を作り、両手で大きなばってんをして言った。

「食べ物をそんな風に捨てたりしちゃだめ!だーめ!だめだよ!」

 

娘はぼくのアシュラマン怒り面のごとく形相にリアリティを見いだせずに笑っている。

「だーめ。ばーつ。いけません!」

なんだそのニコニコまるまる顔は。全然響いてない。しかしそこへ妻が加勢し、余計なアニキの加勢が入ると状況は一変した。娘は急に表情をなくし神妙な顔つきになったのだ。そこですかさずぼくは言った。

 

「ちゃんと拾ってください。自分で降りて拾ってください」

 

すると娘は椅子から降りた。そこでぼくに問いかけるような笑みを見せたから、ぼくは少しだけ微笑み返した。それをみて娘は安心したようで、床におちた鶏肉を取りに行くと拾って自分の口へ入れたのだった。

 

再び椅子をよじ登った娘にぼくは笑顔で言った。

「えらいねえ!ちゃんと自分でできたねえ!えらいねえ!えらいねえ!」

 

2歳児とはここまでできるのか。長男が2歳のときはまるきり赤ちゃんだった印象しかない。こんなふうに言葉を理解し、操り、行動できた記憶はなかったから、ぼくはとっても感動してしまった。まだ生まれて2年しか経ってないのに、すげえな2歳児。

 

それでぼくは思わず、

「お父さん怖いこと言って胸が張り裂ける思いだったよぅ」

と娘に言ったら妻がげんなりした顔をぼくに向けた。