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The Golden Month : DAY 23

「娘と二人甘い一日」

 

息子のストレスの原因が妹が一緒のせいで思い通りに遊べないことは明らかだった。そこでぼくは妻と相談して土日祝日はそれぞれ分けて過ごすことにした。そして今日はぼくは娘と二人で一日を過ごす日だ。

 

親がひとりで子の面倒を見るのをワンオペ(レーション)などと呼んだりする。ワンオペは大変である。父親は一度はワンオペを経験するべきである。などとイベントではもはや定型句のように語ったりするわけであるが、もはや子を二人同時にひとりで見るのが普通になった今、ひとりだけを相手すればいいなんてはっきりいって楽。

 

よりつらい経験をすれば今まで辛いと思っていたことがそうでもなかったなんてことは仕事でよくあることだが、子育てもまた同じだ。父親が育児に参加するための洗礼式として一日ワンオペを経験することは、子どもとがっつり触れ合うという意味で重要である。しかしワンオペの真意は一日体験では決してわかり得ない。

 

子育てとは継続である。それも果てしなく遠く、ゴールも見えないなかで一歩一歩を踏みしめていく地道な作業である。だから、その継続性のなかに身を投じてみて初めてワンオペとはなにかを知ることになる。

 

日差しが強い。ぼくはどこへ連れていけば思い切り遊べて且つ太陽が遮れるかを考えた。

そうだ、あそこへ行こう。そこは遊具がひとつだけある小さな広場だが親水公園の一部であり木々が生い茂っている。先日子どもたちがとても楽しそうに遊んでいたのを思い出して連れて行くことにした。ところが、到着してみると娘はチャイルドシートで眠りこけている。頭を大きく揺らして船を漕ぎ、時折ごちんごちんと手すりに額をぶつけているが目を覚ます気配はない。

 

小さな子のこういうところ、楽だなあ。ぼくは木陰でアオサギの親子を眺めながら考え事をしたりして自分の時間を過ごした。祝日でいつもより起床が遅く、出発時間が昼前になったためお昼のことを考えていたら腹が減ってきた。眠ったままの娘を乗せてスーパーへ行き、その時点で目が覚めた娘と一緒にお弁当やパンを買って、二人で並んで座ってご飯を食べた。

 

何食べる?

これ。

はい。といって口まで運んでやる。

おいしい?

おいしい。

正直言ってこのスーパーのおにぎりは最低だったが、娘が美味しいと言えば最高のディナーとなる。(余談ですがディナーとは本来一日の中で一番大きな食事を指す言葉で、夕食のことではありません)

 

昼を過ぎて日差しはいよいよもって強くなったから、ぼくらは木々が濃い木陰を作る静かな場所まで移動した。娘は先日見せた映画サウンド・オブ・ミュージックのおやすみなさいの歌が気に入ったようで、ぼくの背中に回ると、

♪クックー、クックー

と口ずさみながら言うタイミングでぼくの顔を覗き込む。笑顔いっぱいの彼女。

クックー、クックー

こういうの息子はなかったなあ。もっともあの頃はこんな風に育児に参加していなかったけれども。いや、そういうことではなくて。やっぱり女の子なんだなあ。

お父さん大好き。

不意にそんなことを言う娘。

お父さんも大好きだよ〜。

 

ほどなくして娘がおうちかえりたいと言い、気温も高かったので帰宅することにした。妻と息子が戻るまで娘とべたべたいちゃいちゃしてひとときを過ごす。家族が揃って妻が子らを風呂へ入れてそのとき娘がこんなことを言っていたよと伝言された。

 

 

おかあさんがいーい。お父さんやだった。