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The Golden Month : DAY 31

「2歳のイヤイヤ期」

 

2歳になるといよいよ本格的にイヤイヤ期が始まる。うちの下の娘もご多分にもれず「イヤ!」と「ヤダ!」が常套句となったが、二人目のイヤイヤ期など遅るるに足らない。何事も経験は大きいのである。

 

ところで世間ではこの「イヤイヤ期」という名称がネガティブだから別の呼び名にしようと声をあげるひとがいる。おそらくこういうことを平気で唱える人は自分中心で考えているにそういない。子どもが「イヤ!」というのは、自我の発芽である。相手の要請を拒否し、自分の要求を表明する最初のアクティブでポジティブなコミュニケーションのスタートボタンが「イヤ!」なのである。

 

だから「イヤイヤ期」という名前を悪と取るのは大人の自己中心的思考であって、子ども目線ではちっとも悪ではないのである。それに呼びやすいしね。

 

で、なににつけても「イヤ!」「ヤダ!」というので、キミはイヤとヤダ以外に言うことはないのかなどと言ってみたところで始まらない。そしてイヤと同時に発生するのが「自分で」問題である。つまり何でも自分でやりたがるのだ。これは兄よりも妹のほうがその要求は強い。

なんでも自分でやろうとするその精神は素晴らしいが、例えば手洗いで水道の開け締めまで自分でやらないと気が済まない。あんまり水がだーだー流れていてもったいないので止めると怒って水を出し、さっきより余計に長く手を洗おうとする。意地である。

 

横断歩道の真ん中で突然立ち止まるのはイヤイヤ期の鉄板で、キミの行動は想定内だよむははははは、と心の中で笑って対岸へ輸送してしまう。当然娘は身を捩って嫌がるがセーフティゾーンまで一気に運んでしまう。大抵のことは長男ですでに経験済みだから、時に微笑ましく時に忌々しく思いながら対応できる。

 

ところが息子になくて娘にあるイヤイヤ表現というのがある。直球一本勝負の息子に対して、娘は変化球を好む。それはつまり「お父さんは大嫌い」と「お父さん大好き」を巧みに使い分けるのである。2歳にして硬軟織り交ぜてくるあたりがすでに女なのだ。だがしかしこちらは経験豊富な大人なのでそう簡単に2歳児の術中にはまることなどありはしない。

 

「じゃあもう1回だけだよ〜」

 

こうして娘にとって1回とは2回を意味することとなった。