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The Golden Month : DAY 33

「果たせぬ午睡」

 

朝6時に起きて、天祖神社にお散歩参りに行って、自宅そばのちいさな公園で必ず足止めをくらい、なんとかかんとか帰宅すると9時になっている。

それから出かける準備をして子どもたちを午前中の遊びに連れ出す。午前中は近場の公園を何軒かハシゴをするが、最近は日差しが強く木陰の少ない公園はほんとうに辛い。

空気は乾いていて過ごしやすいが、ジリジリと照りつける太陽に露出した肌がみるみるうちに焼かれていく。

 

子どもたちは甲羅干しする爬虫類のように日向を好み、日陰にいればと言えばヤダといい、帽子をかぶりなさいと言えばヤダといって直射日光の下へ飛び出していく。

そんなこんなで12時が近づくとそろそろお昼だからと嫌がる子どもたちと帰宅して自宅で昼食をとる。

 

ここで午後の遊びに出る前に少し昼寝をしたい気分である。

とくに2歳の娘はまだまだ昼寝が欠かせないので、このタイミングで寝かせたい。そして自分も少し昼寝をしたい。ところが、イヤイヤ期を謳歌する娘は寝たくないといって一向寝てくれない。眠いくせにヤダを優先するのがイヤイヤ期である。「おにいちゃんと寝る!」というので息子に頼んで一緒に添い寝してもらうが、寝そうになるのはぼくと息子で娘だけが寝ない!

 

それで昼寝をさせるのは諦める。しかしぼくは10分でも横になりたいのでソファに横になる。以前ベッドで寝ようとしたら大惨事を経験したのでこどもたちのそばでうたた寝をすることにしたのだった。

 

が。ぼくが横になると娘が上に乗っかってくる。重い。しかし重いだけなら我慢できるがいろいろといじってくるから結局眠れない。「おとうしゃん、おとうしゃん」言いながらあれやこれやとちょっかいを出してくる。しばらく耐えていると娘は飽きて降りていく。よかった。これで少しは眠れる……。

 

「おとうさん、ねえおとうさん聞いてくれる?」

息子のでかい声。なにを聞けばいいのかと言えば鳥の名前や恐竜の名前を暗唱してくれるという。「ねえ、10分だけ寝かせてくれない?」あの長い針が7のところまで静かにしてほしいというとすんなりいうことを聞く。

 

15秒後。「ねえお父さん、おとうさん!」おいっ、1分も経ってないじゃないか!なんだよう。

「一個だけ聞いてくれる?」なに?「オレ雷鳥みたことある?」ないよ。「あるよ、上野動物園で見た」じゃああるよ。7までね。よろしく。

 

「おとうさん、うんちでたー」え、そうかそうかじゃあおむつかえようか。まだ5分も経たないうちに娘がむじゃきにぼくを待っている。ぼくはおむつを替えてまた横になる。

 

「おとうさん、7になったよ」はえーよ。ちょっと待ってよ。おとうさん全然寝てないじゃん。8まで寝かせてよ。「えーっ!」いいから8!意識が急速に飛んでいく。これで眠れ……。

 

「やめろよーっ!」「やめてーっ!」「こっちくんなー」「こっちいくー」うわーん。

やめなさい。ふたりとも離れて。ね。頼むよ。

 

「おとうさん、8になったよ」9まで!「えーっ」9まで!「おとうさん飴食べたい」うるさい!9まで一言でもしゃべったら飴あげない!今度こそ静かにたとえ5分でも寝……。

 

「おとーさーん、うんちでたー」ガクッ。今日に限って2度もか。はいよー。替えようねえ。

 

ぼくはもう昼寝を諦めて娘のおむつをかえると眠気覚ましにコーヒーを淹れた。

「飴たべたーい。あめー」「あめー」

 

わずかに傾いた日差しが山吹色を帯び始め白い雲を染めている。風が出てきたのか欅の葉がサラサラと音をたてた。おやつを食べているときだけが静かな子どもたちを交互に眺めながら動物みたいだなあと思う。同時に可愛いなあこいつらと思う。昼寝できなかったけどなあ。まあいいか。