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The Golden Month : DAY 35

「二日酔いと育児」

 

ぼくはふだんほとんど酒を飲まないがたまに妻とワイングラスを傾けるときがある。

昨日の夜もそんなときで、子どもたちが寝静まったあとワインを飲みながら育児のこと、仕事のこと、将来のことを語り合った。ぼくはアルコールに強くないがワインだけは別で1本くらいならひとりで飲める。ところが昨夜のワインはどうも様子が違って酔った。気温が高く、一緒に飲んでいた麦茶の量が足りなかったのかもしれない。

 

翌朝頭が痛い。胃がむかむかとした。二日酔いである。息子と葛西臨海公園へ再びサイクリングする約束をしていたが、とても自転車に乗れる気分ではない。それでも外へ出れば気分もよくなると思い走る準備をして着替えたが、洗濯物を干しに表へ出て今日はやめようと決めた。空はまるで夏日のように晴れ渡り、気温が高い今日のような日は頭上を遮るものがなにもない河川敷を走るのは危険なのだ。ぼくだって危ないが息子も熱中症になる可能性が高い。

 

ぼくは気分が優れないことと天気が良すぎることを息子に説明して今日のライドは中止にしようと言った。すると息子は顔を歪めて大口をあけてうえんうえんうえんと泣きだした。そうだよなあ。あんなに早起きして楽しみにしていたんだもんなあ。すまねえなあ。

 

ぺちゃんこ座りして両腕をだらりとさげて天井を向いて涙がぽろりぽろりと頬を伝う。うえ気持ち悪。あー頭痛い。泣きじゃくる息子を膝に乗せて落ち着くまで抱きしめてやる。しかし一刻も早くベッドに倒れ込みたい気分だ。

 

子育てというのは体力も精神力もいる。こうして体調不良を起こしたときに自分がいかに健康でいることが重要かを思い知るのである。今日は二日酔いだから一日寝ていようという独身時代(或いは子どもができる以前)はもう遠い過去の話だ。子どもたちはこちらの体調が悪かろうといつもどおりの要求を訴えてくる。

 

だが幸いなことに今日は妻が子どもたちの面倒をみてくれていたから、ぼくはひとりベッドに横になって二日酔いを治すことができた。大量の水分とロキソニンの力を借りて。

 

今日は天候が河川敷ライド向きでなかったから中止の大義名分が立ったが、もし今日が絶好のサイクリング日和だったりしたら、ぼくは激しく二日酔いを後悔したに違いない。

 

本格的な夏が来るまでもう一度葛西臨海公園へ行けるのは一度あるかないかになるだろう。そのチャンスを体調不良で逃してはいけないとぼくは硬く胸に誓ったのだった。