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The Golden Months : DAY 48

「家族の休息」

 

日差しが強く、太陽の下にいるとジリジリと焼かれているのがわかるくらいだ。空気が乾燥しているせいで日陰が涼しいのが救いだが、もう蚊が飛んでいる。ぼくは蚊にとても刺されやすい体質なので家族で歩いているとぼくだけに蚊が群がってくる。ほらもう刺されているじゃないか。いやだいやだ。

 

朝の散歩から帰って午前中の遊びに連れ出そうとすると娘が癇癪を起こして泣きわめいている。たぶんお腹が空いているせいだと思うが、うちの中に食べるものがないから外に出てコンビニで買おうと言うが通じるはずがない。ビスケットを出すと貪るように食べて、次を出せと激しく要求する。きりがない。暴れる娘を抱えて外出し、コンビニでパンとなぜかラムネを購入していつもの公園に到着する。と書くとすんなり来たように聞こえるがここまで1時間半かかっている。いつもなら20分ほどで済む道程が。

 

ラムネで血糖値が上がっておとなしくなったがなんとかパンをねじ込む。だがちいさなパン一つでは腹が膨れるはずもなくしばらくするとまたご機嫌ななめになった。12時過ぎて午前中不在だった妻が合流して娘の意識が妻に向いて少し肩の荷が下りる。

 

午後。どうにも眠くてソファでまどろんでいるうちに本当に眠ってしまった。ふと気がついて見回すと妻と息子はベッドで、娘は床で眠っていた。それぞれが蓄積した疲労を癒やすように深い眠りについていた。妻は連日の激務と家事で疲れて眠り、息子は再びエネルギーを発散するための充電で眠り、娘はいつもの昼寝で眠り、ぼくはそう、やっぱり疲れが溜まっていたのだ。

 

長い午睡から目覚めたのは日がわずかに傾きかけた頃だった。冬だったら夕暮れ時だなと思いながら回りっぱなしだった換気扇を止める。とたんに静寂が部屋を満たす。ぼくは騒音が大嫌いで(誰だって好きな人はいないだろうが)、うちの中では換気扇の回る音や電子レンジの作動音がとくに耐えられない。オールドスクールな換気扇がうるさいのはわかるが、年々高機能化する電子レンジの騒音がやかましいままなのがいつも不思議に思う。それともあのブーンとかゴーとかいう音をうるさいと思うひとがぼくが思うより少ないのだろうか。

 

ぼくはまだ眠気の残る頭を振った。えらく喉が乾いていたので冷蔵庫から麦茶を取り出して飲んだ。ぼくの立てる音で目が覚めたのか妻が起きてきて息子を起こし、妹が寝てる間に二人で買い物へと出ていった。娘は床のマットの上で寝息一つ立てずに眠っている。ぼくは思わず顔に触れ息をしてるか確かめたほどだ。妻と息子がでかけたあともぼくはしばらく娘を寝かせたままにしておいた。

 

規則正しい生活は大切だが、たまの不規則生活もまた重要である。人間何事にも息抜きは欠かせない。普段のリズムを壊してみることで、気分を新たに持ち直すことができる。いつも同じから抜け出してみることで、凝り固まった体や思考をほぐすことができる。子育てが苦しくなりやすいのは、「いつも同じ」が続きすぎることが一因だと思う。「たまには違う」は気分転換のスパイスとなり、再び始まる規則正しい生活に飛び込んでいくためのエネルギーにさえなる。