
妻がそろそろランドセルを買わないといけないと言って驚いた。たしかに息子は来年小学校に上がるが、まだ6月に入ったばかりではないか。ほぼ一年先のことをもう考えないといけないのかと訝しんだ。早いんじゃないのと思ったが世間はもう動いているという。
ランドセルかあ。最近のは高いって聞くよな〜。おばあちゃん買ってくれないかなあ。と言ったら買ってもらえることになった。そして義母が調査したところによるとイオンのランドセルが軽くて性能が良いらしい。イオンかあ。よくわからないけど行ってみれくればと妻と息子を送り出した。
イオンで息子は緑のランドセルが気に入ったらしい。緑かあ。昔は黒と赤しかなかったけど昨今は様々なカラーで売っているということだ。それで妻が持ち帰ったカタログを眺めて仰天した。6万円!? ランドセルってそんなに高価なの!?
カタログには様々なコピーが並ぶ。曰く、軽い。曰く、強い。曰く、反射テープがビルトインされている。曰く、エンブレム付き(なんの?)。などなど。まあ、いろいろと売り文句があるのは構わないが、それにしても高くないだろうか。イオンなら3万円くらいと想像していたぼくの倍の価格にぼくは重い腰をあげた。
ちょっとまて、ランドセルの相場は一体どうなっているのだ。いまどき一体いくらが普通なのだ。そしてわかったことは、ランドセルの平均価格は6万〜7万円ということだった。ヒーッ!六年しか使わないということは一年に1万強である。どう考えても高い。
経験者はそんなの今は当たり前でしょうというかもしれないが、だったら毎年1万円のかばんを新調してやったほうがいいのではないかとぼくなどは考えてしまう。ぼくが今背負っているバックパックなどは1万5000円くらいだったけどもう5年は使っていますよ。6年くらい余裕で持ちますよ。
少子化だからとか祖父母がスポンサーについたから値段が上がったというもっともらしい理由を聞いたが、そういうのいらないから安くしてよというのが偽らざる本音だ。我が家にもスポンサーがついているとは言え、現在のランドセルは高価すぎると思う。
そして驚いたのは、イオンだから安い、ヨーカドーだから安い、なんてことはまったくないということである。そうした量販店のPB商品であっても鞄専門店のつくるランドセルと価格はほとんど変わらないのである。その事実を知った時点で、イオンで購入するという選択肢はなくなった。
同じお金を払うなら鞄専門店がつくる製品を選ぶのが我が家流だからだ。その理由は製品に対する信頼。その一言につきる。イオンがランドセルを作っているわけではない。イオンは企画にこそ噛んでいるかもしれないが、実際の製造は下請けにだしているはずだ。翻って、鞄専門店は自身の技術にプライドを持ってランドセルも作っている。こだわりがあり、またそのメーカーのバッグを所有していればその作りの良さも知っている。
息子はすでにイオンでみてきた安っぽく光るグリーンのランドセルに執着していたが、方向転換すべく説得することにした。大体5歳の子どもが今好きなものが来年も好きである可能性は低い。ランドセルは6年使うのである。6年後の子どもの好みなどまるで違うだろう。だから、現時点での「好き」だけで親が納得しないものを買うのは反対である、ぼくはそう妻に話した。
それから我が家では子どもたちにできるだけ「本物」「まともなもの」に触れさせたいと思っている。保育園休園期間中に毎朝ゴミ拾いをしたことで、街にゴミが落ちていることが普通ではないということを子どもらに知ってもらえたのはゴミ拾いの一番の収穫だった。世の中にはきれいな街があり、清潔な土地があるのだ。いつかそういう場所に引っ越したいという思いが夫婦の間から家族へと広がった瞬間だった。
また我が家では植物堆肥だけでつくった有機野菜を定期的に購入している。千葉県山武市の斎藤完一さんが作る野菜は栄養価だけでなく味がスーパーのそれとは全く違う。濃くて深い。子どもたちはおかげで野菜好きになった。おそらくこれより美味い野菜はないというものを日常的に食べているのも単に健康だけのためではない。これもまた本物に触れさせる目的でもあるのだ。
美しいものに触れさせるというのも大事である。時折美術館につれていくのもそうだし、毎日使うランドセルもきちんと作られたものを渡してやりたい。それが即座にわかってもらえなくてもいいのだ。かならず感性に良い影響を与えるだろう。もちろんそれが著しく高価なものであれば別だが、値段が変わらないのであれば選ばない手はない。
ランドセルシーズンはもう現在で遅すぎるくらいで、なんとか目的のものを購入できたが完成は来年の3月だという。まあ4月の入学に間に合えばそれでいいのだが、この前倒し感にはいささか面食らいますね。そしてこんな高価なランドセルを買えたのもおばあちゃんのおかげでございます。息子はほんとおばあちゃん大好きだもんな。いつもおばあちゃんおばあちゃん言って慕っていて、コロナ禍で会えなくてさみしいさみしい言っているもんな。おばあちゃんが喜んで出してくれたのもキミとの強い絆があるからだよ。ほんと親孝行ものだよ!(そこか)