
2、3歳児というのは無条件でかわいい年齢である。言葉によるコミュニケーション能力を獲得しつつありながらまだ赤ちゃんのようなあどけなさが残る。イヤイヤ期で親の手を焼かせる年齢でもあるが、その可愛さゆえに許してしまう。
パパ友が3歳間近の息子を眺めながら一気に5歳くらいになってほしいとぼくにこぼしていた。それほどイヤイヤが強烈なのだろうが、5歳になると当然赤ちゃん的可愛さもなくなることに注意されたい。パパ友の気持ちも痛いほどわかるが、あの頃の可愛さは格別であったと振り返ること間違いなし。え、記念の写真を撮っていないですって?それはいけませんね。今すぐお申し込みください。すぐ伺います。
さて、泣いても笑っても怒ってもそれにただ歩いているのでさえかわいい2歳児である。見ているだけで目尻がさがり頬が緩んでしまうのは仕方がない。だから自然とぼくの話し方もかわってしまい、それは2歳と5歳相手では明らかな差となって現れる。それが5歳の息子の気に入らないポイントである。
娘が、「おとーさんみてて。せんべべんべべん、せんべべんべべん、べんっ」とオリジナルの煎餅ソングを披露すればすかさず兄も妹の3倍でかい声で、
「おとーさんみてて。せんべべんべべん、せんべべんべべん、べんっ!!」
(うるさい)
と真似をする。妹には「じょーじゅでしゅね〜」とほっぺをふにふにしながら褒める。兄には「上手だね〜」というとオレも「じょーじゅでしゅね〜」と言ってと迫る。仕方がないから「じょーじゅでしゅね〜」と言ってやると、ほっぺに手を当ててと動作も同様を要求する。
一事が万事妹と同様を求めてくる兄であるが、昨日のお求めには恐れ入った。
なにをしたか覚えていないが、娘が尋常ならざる愛らしさでもってぼくのハートを打ち砕き、ぼくは思わずほっぺにチューならずほっぺはむはむしてしまった。食べちゃいたいほどかわいいとはまさにこのことである。するとジェラシーの炎に燃えたアニキがすかさず割って入りこういった。
「オレも食べてーっ!」
息子よ。いつも全力直球勝負だな。斟酌なし忖度なし。おとうさんキミのそういうところ好きだよ。それだけは社会に染まらないでずっともっていてほしいな。
ぼくは息子のほっぺをはむはむしてやる。すると面白がって妹もじぶんもというからはむはむ、オレもはむはむ、じぶんもはむはむ、オレもはむはむ、じぶんもはむはむ、オレもはむはむ…お父さん君たちのほっぺじゃなくてご飯食べたいんですけど。とにかく自分が最後の番で終わらないと気が済まない息子のためにひたすら繰り返したらどうやら満足いただけたようです。