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叱るとは。

写真はイメージです。本文とは関係ありません。

やめなさい、と一度言ってやめれば苦労しない。二度三度、4,5,6,…だんだんこちらの声も大きくなって、何回言ってもやめないからついに頭にきて怒鳴ってしまう。

 

息子は泣く。もうしませんごめんなさいと口では言うが、数分後にはケロリと忘れてまた同じことを繰り返す。毎度毎度同じことでぼくは怒り息子は泣いてを繰り返す。こんなふうに怒鳴ってはいけないんだろうなと思いつつ、それでも頭にくるのを抑えきれない。

 

我が家では見せる映像の内容と回数を厳しく制限している。映像は見れば楽しいが、だらだら見せるようなことは絶対にしないと夫婦で決めたのである。最近は図鑑に付属のDVD(なんで今どきBDじゃないんだろう。お願いだからBDにしてほしい)を観ることが多い。昆虫のDVDをみているとき、息子はそのままソファで昼寝を始めてしまった。午前中力いっぱい外で遊んだからまあいいかとぼくは思い、この隙きに自分も昼寝を企んだが敢え無く娘に妨害された。のはまあ本題ではないのでいいが。

 

随分寝ていたようだ。目を覚ましたのでおやつを出してやる。そして事件は起こった。

 

彼は食べ終わってはたと気がついたのである。DVDを最後までみていないということに!

 

息子は突然泣き出した。大声でわめき出したと言ってもいい。続きを見せろというのである。しかしすでに夕方がせまり、今日はもう見せられないから明日見なさいと伝える。もちろんこれで引き下がるはずがない。見せろ、見せない、見せろ、見せないをエンドレスに繰り返し、ついに見せなきゃいたずらする。このピアノ(電子)壊すからな!と額に青筋立てて叫んだのである。

 

さて、いつもならここでぼくも怒って怒りまくって事態を急速に収束させるのであるが、今日はそれではなんの解決にもならないという気持ちが浮かんだのである。それで、だまって彼の行動を見ていた。

 

息子はピアノの鍵盤を体重をかけて何度か叩いたのちに、ピアノに飛び乗るとその上でジャンプした。ミシッミシッミシッ。

 

なんという傍若無人ぶりだろう。なんという自分勝手な行動だろう。一体だれがこんなことを許せるというのか。ぼくは腹ワタ煮えくり返りながらもつとめて冷静に眺めていた。息子は満足したのかやりすぎたと後悔したのかピアノから飛び降りると少しおとなしくなった。そこでぼくはゆっくりと立ち上がり、息子をボッコボコ…にしたい気持ちをぐっと堪えてピアノをみた。液晶が割れていた。ぼくは電源を入れるとすべての鍵盤から音がでるかチェックした。音は問題ない。各種ボタンも問題なさそうだ。しかし液晶が割れているので表示がまったくみえないから何を選んでいるのかわからない。

 

ねえ。こんなふうにものを壊していいのかな。ひとが大切にしているものを壊しちゃったんだよ。キミはお金を出せば直るとおもっていないか?お金を出しても二度と戻らないものがあるんだよ。

 

キミは世界にひとりだけの大切なお父さんの子どもだよね。キミの代わりはどこにもいないよね。それとおんなじさ。だからあんなふうに壊したりなんかしちゃあいけないんだよ。

 

すると息子は、泣きながらDVDは明日みるから許して〜、ごめんなさい〜。と言ったのである。

 

本当に息子が心から理解したかどうかは今後の動向を見守る必要がある。しかしただ怒鳴るだけでは駄目なのだ。ただ力で抑圧するだけでは意味がないということを今日ぼくも学んだのである。代償は電子ピアノ1台。

 

しばらくすると、息子は何事もなかったようにケロリとしていた。これでいいのだ。いつまでもうじうじしている必要もない。いつもどおりの笑顔が息子に戻っていた。

 

イタイイタイイタイ。うわーん!

 

夕食の支度をして背中を向けていると、アニキが妹をシバいていた。なにやってんだーっぐおうらーっ!!!!