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すげえおにぎり

 

 

子どもたちはおにぎりが大好きである。中でも味噌を具にした味噌おにぎりが大好きである。それから梅干しおにぎりも好きである。

 

 

 

食事のときおにぎりを作ってとせがまれると、味噌や梅干しの具だけ入ったおにぎりを作ってやる。つまり外側に塩をつけないわけだ。それは子どもの塩分摂取量を考えてのことであり、すぐ食べるのだから保存性など考慮しなくていいわけである。

 

 

 

塩なしのおにぎりと聞いて顔をしかめるのは大人である。それはただのご飯を丸めた(うちでは三角だが)だけではないかと思うだろうが、おにぎりの標準をしらない子どもたちは喜んで食べている。

 

 

 

ぼくとしては塩気のきいたおにぎりの味を知ってもらいたいという思いがある。なにしろその塩によって米が引き立てられて甘みが増しておにぎりの美味さが倍増するからである。しかしまだ体の小さな子どもだから、塩分摂取量も考えなければいけない。そこで具を入れずに塩だけで握った塩おにぎりを作ったのである。

 

 

 

それが思いの外好評であった。とくに息子はえらく気に入ったようである。それは当然である。塩気と甘みのハーモニーこそがおにぎりの醍醐味だ。グルメな息子が気に入らないはずがない。

 

 

 

それでしばらく塩おにぎりか、味噌(だけ)おにぎりか、梅干し(だけ)おにぎりかを自分で選んで食べていた。ある時、おにぎりを作ってといわれてここいらで本当のおにぎりを食わしてやりたいという気持ちがぼくの中でふつふつと湧き上がってきた。

 

 

 

何がいいかと聞けば味噌という。よしわかったといって具に味噌を入れて外側に塩をふって本当のおにぎりを握ってやった。お父さんこれなあにと聞くから、具は味噌で外は塩と教えてやる。

 

 

 

「えっ、両方?味噌と塩?すげえな!」

 

 

 

と息子は声をあげておにぎりにかぶりついた。ぼくは息子の心からでた一切脚色されていない「すげえな」を聞いて思わず感動してしまったのである。はい、この感動わかるひと手を上げて。

 

 

 

こういう子どもが持つ純粋さは本当に大事にしていきたいと思う。そして自然に口をついて出た言葉をみすみす見逃してはならないと思ったのである。