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お風呂上がりのクレヨン

 

風呂上がりはきれいにしていたいと思うのは大人の感覚というか、ある程度社会的通念や衛生の概念が出来上がった証拠ではないかと思う。

 

 

 

三歳の娘はお風呂から出て髪を乾かし終えるとさっそく紙に絵を描き始めた。それもクレヨンで。クレヨンに巻いてある紙などあってないようなもので、娘の手はまたたく間に緑色に染まっていった。ぼくはそれを眺めながらあ〜あという気持ち。でもなんだか楽しそうに描いてるし、一生懸命だからなにも言わずに放っておいた。

 

 

 

しばらくして娘が紙をもってやってきた。これお父さんにあげるねと言って今描いたばかりの絵をぼくに手渡した。

 

 

 

手洗ってくるといって洗面台に駆けていったが、ご存じのようにクレヨンは水では落ちない。最近では水で落ちるクレヨンも売っているが、少なくとも今娘が使ったのは落ちないやつだ。だからぼくが、クレヨンは水じゃ落ちないよと声をかけた。じゃあやって、というからそこのウェットティッシュ出してごらん。アルコールなら落ちるのだ。実際は細かい粒子が娘の柔らかな手の平の奥に入り込んでいるから全部は落ちないんだけど、拭いてあげたら大体きれいになった。

 

 

 

クレヨンはそこらじゅうを汚すから本当はお父さん嫌いなんだけど、キミが小さな手で握って一生懸命描いている姿を見ちゃうとぜんぶ許せちゃうよ。絵ありがとね。