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節分の記憶

昨日は節分であった。娘が保育園で豆まきをしたようだ。迎えに行くと、登場した鬼が怖すぎて今でも怯えているのでフォローしてあげてくださいと先生に言われた。

 

鬼がいる、鬼怖い。

 

切実な表情でぼくに寄り添う娘をみて昔のことを思い出した。

 

たぶん小学校低学年の頃だったと思う。ぼくは学校で制作した鬼のお面を玄関のドアにつるして

このお面をつけて入ってきてくるようにとメモを添えた。当時母親がパートに出ていて

帰宅はぼくらが下校したあとだった。

 

ところがそれからお面を吊るしたことなどすっかり忘れてしまったのである。ぼくはのんきに

漫画を読んだりしておやつをつまみながら過ごしていた。

そこへガチャリとドアがあいて、鬼が入ってきた!

 

ぎゃーっ!

 

全身が逆だって玉がひゅんっとなった。

 

そしてぼくは一瞬で悟った。あれは本当の鬼ではなくて母親がぼくのリクエストに応えて

お面をつけてくれただけなのだ、と。一瞬の勘違いだったが本気で恐怖してしまった自分が

恥ずかしかったから、ぼくは必死でその場を取り繕ったのである。

 

母親のほうはと言えば、ぼくのなかなかのリアクションに満足したのかぼくの取り繕いに

さしたる興味も示さなかった。

 

娘の恐怖がぼくの記憶を呼び覚ました。ああ、子どもにとって鬼はいるんだなあ。