
少し急な坂である。しかし距離は1キロもない。せいぜい数百メートルといったところだ。
だがしかし息子にとっては激坂ヒルクライムとなった。ある程度の坂ならダンシングで
こなせるようになったが、それから少し斜度が増すとペダルを踏めなくなる。
重力に背中を引きずり落とされる。
こんな坂歩いたほうが速いよ。
そういって息子は自転車を降りた。そして黙々と自転車を押して坂をあがってぼくの
ところまでやってきた。ぼくのところに来て笑った。
そうかそうか。強くなったな。成長したな。
以前だったらめげて、泣いて、立ち止まっていたのに。
でも頂上はもう少し上だよ。いけるかい?
ぼくは息子の返事を待たずにペダルを漕ぎ出した。息子もとくに返事をしないで
走り出した。ふらふらしている。しかしペダリングは力強い。足をつかないで、
登りきった。
キミは気づいているかい?どれだけ自分が成長しているかってことを。
キミは気づいているかい?ぼくがどれだけ嬉しいかってことを。