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森と遊ぶ。

 

森の小径に倒木がある。倒木といっても倒れる途中で他の木の二股になった枝に引っかかって完全に倒れるのを免れている。桜の木だ。地面には根本からボッキリいった痕跡を残していて人為的でないなにかの拍子に折れたのだろう。ぼくはその斜めに倒れた幹に乗ってみた。そしてその上で飛び跳ねてみた。うん、大丈夫だ。

 

 

 

ねえ、登ってごらんよ。と子どもたちを誘ったけれども怖がって登らない。こうやって登ってさ、そしてジャンプするんだ。ぼくは実演してみせる。地面は降り積もった落ち葉でできているからふかふかに柔らかい。

 

 

 

お父さん手つないで。ぼくが片手をつないでまるでエスコートするようにそろりそろりと子どもが登っていく。そしてジャンプ!一回やったらやめられない。次はオレ!次わたし!交代にエンドレス。どんどん高いところまで登っていく。もうぼくの手が届かないというギリギリまで登ってジャンプ!何回じゃきかない。何十回もジャンプ!

 

 

 

いいかい。この木登りは今年限定だぞ。もうしばらくしたら腐って折れちゃうんだから。ほら今度は自分だけで登ってご覧よ。さすがに妹は怖がったけど、アニキが頑張った。もう帰ろうって言わなかったら一日中ジャンプして遊んでいられたね。ぼくが森がすごいなあと思うのはこういうところさ。どんなものだって見方を変えれば遊び道具になる。もちろん保証された安全なんてない。でもぼくが見ているからね。ぼくはどうしてかそういった自然の機微がわかるんだ。

 

 

 

子どもたちがね。大きな声で叫ぶんだ。楽しいからどうしたって声をあげて笑っちゃうね。森の中ならどんなに大声だしても平気。あんまり奇声をあげるから、最初は鳥が鳴いているのかと思ったよ。それが妹の奇声だってわかったから、ぼくはアニキと笑ったね。ここんとこ雨続きだったから久しぶりの日差しが眩しい。子どもたちはいつまでも木登りとジャンプを繰り返していた。