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父は娘を悲しませた。

 

夕食時に聴いていた音楽から「キミを傷つけはしない〜♪」という歌詞が聞こえてきた。ぼくのお膝でご飯を食べていた娘が言った。

 

「お父さんは私を傷つける?」

 

「お父さんはキミを傷つけたりなんかしないよ」

 

「なんで?」

 

「だってキミはお父さんの宝物だもの」

 

「でもさあ、傷つけてるよ。保育園でバイバイしてお父さん行っちゃって傷ついた」

 

「えっ」

 

「早お迎えしてくれなくて傷ついた」

 

「ええっ!」

 

「やっぱり週末のおうちが最高だなあ」

 

と最後に娘はつぶやいた。これが娘というやつか。息子にはなかった発言である。ぼくの反応に味をしめたのか、お風呂上がりにぼくに向かってほくそ笑みながら

 

「お父さん私を悲しませた〜」

 

とおっしゃっておりました。