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マスクを外せない少年たち

 

政府がマスク着用の可否についてのガイドラインらしきものを発表してから随分経つ。しかし町中はもとよりだだ広い公園でさえマスクをしていないのはぼくを含めて数えるほどしかいない。

 

 

 

小学校からも同様の発表がプリントでもたらされた。端的に内容を言えば屋外は基本マスクなし、屋内でも密でなければマスクをする必要ははいというものだった。ぼくはこのニュースを聞いて息子が大喜びをすると思っていた。なぜなら息子は大のマスク嫌いであり、コロナ禍が始まったころ息子にマスクをさせるのに苦労した記憶があるからである。

 

 

 

ところが。朝自宅から集団登校の集合場所まで一緒に歩いているときに息子がせっせとマスクをつけているのにぼくは気がついた。ねえ、とぼくは言った。もう外でマスクはいらないんだよ。学校がそう言っていたじゃあないか。すると息子は嫌だすると答えた。あれほどマスクが嫌だと言っていたのに一体どうしたというのだろうか。

 

 

 

なんで?マスク嫌いだったんじゃなかったの。外していいって言っているのだから外せばいいじゃあないか。すると息子はこう言ったのである。

 

 

 

だって、みんなしてるもん。

 

 

 

ぼくはこの言葉を聞いて大切なものが奪われたそんな気がした。小学二年生にして、すでにみんなと同じでいることに安心感を覚えている。逆に言えばみんなと違うことは彼に不安を引き起こすのだ。マスクは感染予防のためにするのではなく、みんなと同じでいるためにするという目的がすり替わって彼の中に存在する。

 

 

 

これが学校の成果というわけか。望むと望まざるとに関わらず、学校は子どもたちにそのような意識を植え込んでしまう。それでいて考える力を育もうなどとスローガンを揚げていたりするからへそで茶が沸く。

 

 

 

今日も集合場所に集まった少年たちは全員マスクをきっちりつけている。ぼくひとりマスクをしないで立っている。