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初めてもらったお小遣いの使いみち

 

妻が子どもたちを連れて実家に帰省してそこでコロナに感染した。当初五日間の予定が三週間に延長されて、その話は「はなたれねこ移住する。」に詳しく書いたので興味のある方はそちらをご覧ください。

 

 

 

さて、自宅軟禁状態になってたいくつの極みに達していた子どもたちは、おばあちゃんの肩たたきをして小遣い稼ぎをしていたようである。一回叩いて十円とか貰っていたらしい。うちではお小遣いをあげていないのでおもちゃじゃなくて現ナマが貰えるとあって兄弟は多いに働いたという。結果、兄が四百いくら円稼いで、妹は二百数十円稼いだそうだ。金額からして途中ボーナスが支給されたことは間違いない。四歳の妹は合計金額よりも合計枚数のほうがよほど重要らしくて、五十円玉を十円に両替してもらって喜んでいた。

 

 

 

さて、ぼくはビデオ通話でその報告を本人たちから自慢げに受けていた。

 

「そうそれはすごいね、そのお金でどうするのかな」とぼくは聞いてみた。すると娘がこういった。

 

「このお金でねえ、お父さんの好きなよなよな(ビールのこと)買ってあげるね」

 

「え、お父さんにビール買ってくれるの?」

 

「うん、好きなお酒たーくさん買っていいよ」

 

ちょっと待って、お父さん泣いちゃうよ。そんなセリフを聞かされて目頭が熱くならない親はいまい。

 

 

 

待機期間を満了し無事に帰宅を果たしてから、貯めたお小遣いをじゃらじゃらと見せてくれながら、はいお父さんにあげるといって全額ぼくの手のひらに乗せた娘。気変わりしていなかったんだ。この子、本気だったんだ。またしても目頭がじいんと熱くなる。

 

 

 

それから数日して娘にお酒を買いに行こうと誘われてぼくらは近所のスーパーへ行った。ぼくは棚からよなよなエールを一本とってかごに入れた。すると娘が言った。

 

「もっと買っていいよ。もっともっと買っていいよ」

 

「うん、お父さん一本で十分だよ。ありがとね」

 

 

 

娘はちょっぴり不満げだったけど、ぼくはその一本のビールを妻と半分こしてじっくりと味わった。こんな美味しいビール飲んだことないよ。あ、書いていたらまた目頭がじいんしてきた。

 

 

その後、妻が買ってきたよなよなについても娘の中では自分が買ってあげたことになっていて、「あ、それ私が買ってあげたビールでしょ。飲んでいいよ」とにんまり笑うのであった。