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娘理論

 

娘理論

 

 

 

「保育園まで抱っこして」

 

そう言って娘は両手をあげた。

 

「ちょっと待ってよ。お父さんこんなに荷物もってるんだよ?」

 

月曜日は週末に洗った布団だのなんだので荷物が多いのだ。それに最近娘が重くなってきた。

 

「じゃあ私が持ってあげる」

 

娘は保育園の黄色いカバンと水筒をたすき掛けにした。小さな体に大きな水筒がぶら下がって可愛らしい。なんだちゃんと手伝ってくれるじゃないか。そう思ったオレが甘かった。

 

「はい抱っこして」

 

「……。」

 

 

 

なんだなんだその得意げな顔は。娘よそれは持ってあげるとは言わないのだよ。

 

 

 

「はい抱っこして!」

 

娘の語気が強まった。そしてぼくは抱っこした。話はこれで終わらない。抱っこをしながら歩いていくと娘が言った。

 

 

 

「えらいねって言って」

 

「え、なんで?」

 

「えらいねって言って!」

 

ちょっと待て。荷物全部もって抱っこまでしてえらいのはどっちなんだ。ここで下がったら親の沽券に関わるではないか。そこでオレは言い返した。

 

「えらいって何がだよ」

 

「えらいね、いい子ちゃんだねって言うんだよ!」

 

娘はぼくの首を締めながら叫んだ。

 

「え、えらいねイイコチャンダネ…」

 

 

 

なにこの娘理論。