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五歳になってもしないよ宣言

 

娘は今月誕生日を迎える。今朝もいつものように娘のトイレに付き合っているときに言ってみた。

 

「五歳になったらさあ、自分でおしり拭くことにしようよ」

 

「しないよ」

 

娘は即座に答えた。しかしそんなことにいちいち驚く父親ではない。

 

「だってさあ、保育園では自分で拭いてるんでしょ」

 

「保育園では拭いてるけどおうちじゃしないの!」

 

娘は語気を強めて言った。そして続けざまにこう言った。

 

「お父さんごめんねして!」

 

「え、なんで…」

 

「いいからやさしくごめんねして!」

 

「ご、ごめんね…」

 

「そうじゃなくてちゃんとやさしくだよお、もうっ!」

 

「ごめんね」

 

「やさしく言ってないよもう、早く!」

 

「ごめんね」

 

「いーよー」

 

 

 

ふう。毎度毎度謝罪を要求するのなんなんだ。ぼくは娘のおしりを拭いて終わった旨を伝えた。

 

 

 

「お父さん履かして」

 

「え、だっていつもじぶ…」

 

「お父さん履かして!はやくしてよもう!」

 

 

 

ここで負けたら親の沽券に関わる。ぼくは父親として一発ガツンと言ってやる必要を覚えた。

 

 

 

「パンツくらい自分で…」

 

「お父さんはやく全部やってよもう!」

 

 

娘は強烈なゲンコツを何度も振り下ろしながらぼくを跪かせた。