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犬が飼いたい

子どもたちが、とくに息子が動物を飼いたいと言う。

 

我が家は昆虫をたくさん飼っているが、それ以外の動物はまだ飼ったことがない。そしてぼくが猫アレルギーなので猫やそれに近しい大きさの犬は対象外である。それで息子は最初鳥が飼いたいと言った。文鳥とかジュウシマツがいいという。そこでぼくは言った。

 

動物を飼うっていうのは大変だよ。クワガタとは訳が違うのだよ。毎日餌をやって掃除するんだよ。泊りがけの旅行なんて行かれなくなるのだよ。

 

そう諭すと鳥を飼いたいとは言わなくなった。

 

 

 

ぼくのいないときに自転車のスポークが外れて急遽近所の自転車屋さんに持っていった日があった。初めて行くそのお店ではゴールデンレトリバーを飼っていた。そのおとなしい大型犬を見て息子の動物を飼いたい熱が再来したらしい。その犬がよほど可愛かったと見えて、うちでもレトリバーを飼いたいと言い出した。

 

 

 

大型犬ならお父さんのアレルギーもでないしょうというのである。

 

実際そのとおりで、猫みたいな小さな犬では出ることがあるのに、大型犬では反応しないのである。人体は誠に不思議なり。

 

 

 

そこでぼくは言った。

 

犬というのは毎日散歩をしないといけないんだ。晴れの日だけじゃないよ。雨が降ろうと雪が降ろうと関係ないんだよ。それがキミにできるかい。

 

 

 

息子は少し考えて無理と答えた。それならどうして犬が飼えよう。しかし息子は続けた。今は無理かもしれないけど無理じゃなくなるかもしれない。

 

 

 

そこでぼくは言った。

 

犬を飼ったら泊りがけの旅行なんて行けなくなるんだよ。それでもいいのかい。

 

すると息子は腕組みをして言った。そこなんだよなあ。

 

だろう、そこなんだよ。

 

 

 

それにさ、とぼくは続けた。

 

キミは犬のうんこが拾えるかい。

 

なぜか娘が爆笑した。息子も笑いながら言った。素手で?

 

素手なわけないだろ。ビニールで掴んで袋をひっくり返してこうだよ。

 

ぼくは動作を真似てみた。

 

できないだろう。

 

無理。

 

じゃあ、とても犬など飼えないよ。

 

ちょっとまって今は無理だけど無理じゃなくなるかもしれない。

 

 

 

ぼくは息子のセリフを聞き流して言った。

 

大体いつもお父さんはあのうんこを拾っているところを見ると疑問に思うんだ。犬を飼っているのか、それとも犬に飼われているのかってね。宇宙人があの場面に遭遇したら犬が支配者だと思うだろうね。

 

 

 

娘がうんこと言いながら笑い続けた。

 

うんこが乾いてたら臭くないよね。でも乾いてなかったら臭い。息子が自分で言いながらぶひひひひと笑った。

 

 

 

そんな会話をしながら我が家に犬がいたらどんな暮らしになるだろうなと少し想像してみた。新しく家族が増えるようなものだから生活の質が変わるそんな気がした。

 

 

 

それから犬について少し調べてみた。ゴールデンレトリバーは大型犬だが番犬には向かないらしい。実際おとなしい犬なのだ。ゴールデンレトリバーにはアメリカ型とイギリス型の二種類あって、色の濃さが違うと。ラブラドールレトリバーはゴールデンとは似て非なる犬で祖先が違うと。盲導犬といえばこいつだな。ちなみにレトリバーはretrieve(回収する)から来ている。回収者というわけだ。猟師が撃ち落とした鳥を回収してくる役割からその名前がついたそうである。面白いなあ。また雑学が身についた。

 

 

 

ぼくはどうせ飼うなら番犬として役立ったほうがいいのではないかと思った。柴犬は番犬になるようだ。さすが日本の犬である。番犬にするならシェパードかドーベルマン。いや怖えよ。怖すぎだよ。

 

 

 

101匹わんちゃんのダルメシアンなんかどうかな。毛が薄いから寒さに弱そうだ。成犬になったら室内で飼うつもりはさらさらないので寒さに強い犬種でないといけない。

 

 

 

ネットを眺めていると今まで見たことも聞いたこともない犬の名前が並んでいた。犬の世界も奥深い。

 

 

 

そもそも犬はどうやって手に入れるのか。ペットショップで買うのだけは嫌である。なるほど里親か。うまいこと子犬を貰えればいい。その手の里親サイトはいくつかあって、しかしどこも残っているのは成犬ばかり。子犬はでればあっという間に行き先が決まってしまうようだ。まあ今日明日という話ではないから気長に見ていればいい。奪い合って手に入れるようなものではないのだから。ご縁があれば自ずとその機会はやってこよう。果たして我が家にゴールデンレトリバーの子犬がやってくる日はあるのか、ないのか!