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秩父旅行

 

秩父など一体なにがあるのだろう。

 

ロードバイクで周辺の山々を走ったことは何度かあるが、秩父を観光してみようと思ったことはこれまで一度もなかった。だから秩父を観光するというのはまるでピンとこない話だった。ところが西武線に乗ると秩父観光の映像が毎日流れている。昭和レトロな街並みがある。大きな神社がある。なぜ山奥にそんな場所があるのかと調べてみれば、秩父の街は 山に囲まれた盆地にあって商業流通の拠点として栄えたそうです。

 

 

 

現在では石灰の産出で切り崩された武甲山が有名になっているが、その昔は銅の産出で名を馳せ、教科書にも載っている和同開珎もこの地に由来する。金(かね)が出たというわけで金運の神様と崇められる聖神社は全国から参拝者が訪れていて、街の中心部にある秩父神社はなかなかに壮大で、今回は足を運べなかった三峯神社も見事らしい。

 

 

 

西武秩父駅と秩父鉄道の秩父駅周辺は観光地としての開発が進んでいて、おしゃれなカフェが点在している。埼玉といえばうどんであるが、ここ秩父では蕎麦だそうで蕎麦屋がたくさんある。それからラーメン屋も数が多い。市中を歩くのが初めてで無駄足をなんどもしたが、初めてなので仕方ない。歩き疲れた子どもたちが不平を言ったがなんとかごまかして歩かせた。普段森の中をこの倍は歩いているのだから歩けないわけではないのだ。ただ退屈なだけである。

 

 

 

娘がビーガンカフェの前でここに入ると駄々をこねたが、コーヒーを置いてないのでぼくが嫌だと言った。お店のひとが全部植物性のものしかないので…と意味のわからないことを言っていた。はてコーヒー豆は動物なのかと心のなかで突っ込んでみたが、友好的に解釈すればカフェインは刺激物なのでビーガンには禁忌といいたかったのだろう。

 

 

 

結局駅前の観光施設にあるフードコートでお茶を濁すことにした。子連れでいるとこういう場所を利用する機会がぐっと増える。子どもたちはジェラテリアでチョコレートアイスを買って満足し、妻は秩父にあるウイスキー会社のIchiro’s Moltのハイボールを飲んで満足し、ぼくは無料の水を紙コップで飲んで一息ついた。

 

 

 

たった一泊二日の旅だったが、子どもたちはそれなりに疲れたようで行きは筋トレに勤しんでいた娘も兄にもたれかかるようにして眠っていた。ぼくは途中うとうとしながらも午後の日差しにかがやく風景が次第に見覚えのある街並みに変わっていく様を眺めていた。