夕方保育園に迎えに行くと娘は開口一番こう言った。
「朝ねえ、目になみだを浮かべたよ」
おっといきなりどうしたというのだろう。藪から棒に唐突に不意打ち。
「え、なんで涙浮かべちゃったの?」
とぼくが聞けば娘は答える。
「だって。お父さんと一緒にいられなくてさみしかったんだもん」
タヒーッ!
ぼくはこころで涙した。こんなことを娘に言われたらどんなお父さんだって泣いてしまうに違いない。それに娘は追い打ちをかける。
「さっきも目になみだを浮かべたよ」
涙浮かべちゃったのかあ。そうかそうかといいながらぼくは娘をぎゅうぎゅうした。娘は目に涙を浮かべるという表現が気に入ったようでそれからなんども目に涙を浮かべていた。それでぼくはなんでも許しちゃうのであった。